万が一のときに知っておきたい医療費のはなし

万が一のときに知っておきたい医療費のはなし

タレントの北斗晶さんが、乳がんにより手術を受けました。このようなニュースを聞くと、自分がもし病気になったら治療費は払えるだろうか、と不安になる方もいるかもしれません。万が一入院や手術をすることになっても、医療費を軽減できる制度があるのはご存知ですか。今回は、高額療養費制度や医療費控除制度についてご紹介します。

万が一の時のお金の不安
毎年必ず健康診断を受けていたとしても、突然病気が分かったり、交通事故に遭ってしまったりと、私たちの体や健康にはいつ何が起こるか分かりません。タレントの北斗晶さんが、乳がんにより手術を受けました。このように、テレビや新聞などで、芸能人の方がガンや病気になったというニュースを聞くと、自分は治療費を払えるだろうか、と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。万が一、入院したり、手術したりすることになったとしても、お金の心配をせずに、しっかり治療に専念したいものですよね。そんなお金の不安を払拭するために、日本には医療費を軽減できる制度がいくつかあります。いざという時慌てないためにも、これらの制度について勉強しておきましょう。

高額療養費制度とは?
まずご紹介するのは、高額療養費制度です。高額療養費制度とは、医療機関に支払った金額がある一定の基準(自己負担金額)を超えた場合は、基準を超えた金額は払わなくてもよい、または払いすぎた分が後から戻ってくる制度です。最終的な自己負担額となる毎月の負担の上限額は、加入者の年齢(70歳以上かどうか)や、加入者の所得水準によって分けられます。例えば、70歳未満で、1ヶ月の標準報酬月額が28万~50万円の方の場合、ガンの手術で30万円の医療費を支払ったとすると、自己負担額は87,430円。病院に支払った30万円のうち、212,570円が戻ってくることになります。この自己負担額は、各医療保険で共通の金額が設定されていますが、健康保険組合や自治体によっては、この共通の額よりも低く設定されているところもあります。詳しくは、自分が加入の医療保険や自治体に問い合わせるようにしましょう。

高額療養費制度を利用する時のポイント
万が一の時に、とても強い味方となる高額療養費制度。しかし、利用する時には、いくつかの注意が必要です。まず、高額療養費制度の適用範囲です。入院中の食費、差額ベッド代や、先進医療にかかる費用等は、高額療養費の支給の対象とはされていないので注意しましょう。また、高額療養費を申請した場合、支給されるまでには、受診した月から少なくとも3か月程度がかかります。余裕をもった資金繰りが大切ですね。一方、高額療養費制度の支給申請は、さかのぼって行うことが可能です。高額療養費の支給を受ける権利の消滅時効は、診療を受けた月の翌月の初日から2年なので、この2年間の消滅時効にかかっていない高額療養費であれば、過去にさかのぼって支給申請することができます。

高額療養費制度の申請方法とは?
高額療養費の申請手続きには、①事後に手続きし、後から医療費が戻ってくる方法と、②事前に手続きをしておき、もともと払う医療費を少なくすることができる方法の2種類があります。②事前の手続きについては、自己負担限度額が超えるか超えないかわからない場合でも、申請しておくことが可能です。この制度を選択すると、保険機関から限度額適用認定証という証明書が交付されることになります。①事後手続きでも、②事前手続きでも、申請には、保険証や印鑑、医療機関での受け取った領収書や自分の振込口座がわかるものなどが必要となります。加入している保険によって手続き方法が異なるので、保険証に記載されている連絡先に問い合わせましょう。

医療費控除制度とは?
次は、高額療養費制度と同様に、病気や事故など万が一の時の強い味方となる、医療費控除制度についてご紹介しましょう。医療費控除制度は、年間10万円を超えた医療費については、年間の総所得から差し引いて税金を計算してくれる仕組みです。自分だけではなく、自分と生計を一にしている配偶者や、その他の親族もまとめて計算することができます。自分や家族がまとめて毎年どのくらい医療費を使っているのか分からない方は、一度計算してみてはいかがでしょうか。また、医療費控除制度は、高額療養費制度に比べると、出産費用や、入院や通院にかかった交通費、薬局で買った治療薬等も対象となるので、手術などの高額治療費がなかった年でも、利用することができます。適用となる費用の範囲を具体的に見ていきましょう。

医療費控除制度の適用範囲
医療費控除制度が適用となる意外な費用、まずは、病気ではありませんが、出産に関わる費用です。妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用や通院費用に加え、出産で入院するときにタクシーを利用した場合は、そのタクシー代まで医療費控除の対象となります。出産に伴う入院中は、病院で支給される食事を摂ることになるので、医療費控除の対象になりますが、他から出前を取ったり外食したりしたものは、控除の対象にはなりません。さらに、入院に際し、寝巻きや洗面具など身の回り品を購入した費用も医療費控除の対象になりません。

また、歯の治療については、保険のきかない、いわゆる自由診療によるものや、高価な材料を使用して、治療代がかなり高額になるものがあります。このように、一般的に支出される水準を著しく超えると認められる特殊なものは、医療費控除の対象になりません。

一方、怪我や病気で入院した場合、本人や家族の都合だけで、個室に入院したときなどの差額ベッドの料金は、医療費控除の対象になりません。しかし、付添人を頼んだときの付添料は、療養上の世話を受けるための費用として医療費控除の対象となります。このように、対象となる費用の範囲は細かく決められているため、医療費控除を利用する時には、しっかり確認をするようにしましょう。

医療費控除の申請方法
医療費控除の適用を受けるためには、確定申告をする必要があります。確定申告の時期である、毎年2月16日から3月15日の間に、医療費控除に関する事項を記載した確定申告書を提出しましょう。国税庁の確定申告用のホームページには、支払った医療費を入力・集計するための「医療費集計フォーム」というフォーマットが掲載されています。手続き方法も詳しく掲載されているので、内容をよく確認して、早めに準備するようにしましょうね。

今回は、万が一、病気や事故にあってしまった時に強い味方となる、高額療養費制度と、医療費控除制度を紹介しました。お金の心配をすることなく治療に専念するためにも、このような制度が利用できることを覚えておくと安心ですね。