マイナンバー開始 先行する米国「社会保障番号」ってどんな制度?
マイナンバーの通知カードがそろそろ届くが、具体的にどのように使うのか、情報管理に問題はないのかなど、疑問を持っている人は少なくないだろう。こうした個人に番号を割り振る仕組みは海外ではかなり広がっている。日本でも、米国の社会保障番号(SSN、Social Security Number)は有名だろう。
日本の戸籍に当たるものがない米国 子供の出生届と同時に申請
米国で初めてSSNが発行されたのは1936年。現在は米国で子供が産まれた時に、親が出生届と同時にSSNを申請する。出生と同時に申請する現行制度が確立したのは、1990年代になってからだ。
米国には日本の戸籍にあたるものがなく、このSSNを国民背番号として使用している。国民の所得を把握し税金の徴収を行ったり、年金や保険など公的な社会保障制度を管理したりと、生活に関わるあらゆる場面で使われているSSN。番号の一元管理によって、事務手続きは非常に効率的だ。
SSNないと米企業就職は難しい 留学も労働許可証なくSSN発行困難
米国で生活をしようとするとSSNはすぐに必要となる。アパートを借りたり、ガス・水道・電気の契約をしたり、自動車免許を取得したり。あらゆる場面でSSNを提示するように求められる。携帯電話の契約や、銀行口座の開設時にもSSNが必要。そもそもSSNがないと、米国籍企業に就職するのは難しい。
日本企業の米国支店に転勤になった場合などは、米国の社会保険局で発行手続きをする。ビザや労働許可証、パスポートなどを本人が持参し、申請用紙を提出すれば、通常は2 〜3週間でカードが郵送される。
一方、米国に留学することになった日本人などは、労働許可証がないため、SSNの発行は難しい。特に2000年代になってからはSSNの審査が厳しくなり、ビザの種類によってはSSNが取得できなくなった。しかし、パスポートなどの身分証明書、米国での住所を証明できるもの(公共料金の領収書等)を提示し、米国在住の目的やSSNを持たない理由を説明できれば、SSNがなくても一般的には生活上問題がない。
州によっては、最寄りの社会保険局で必要な手続きを行うと、SSNを持たない(持てない)ことを証明する不許可証明書(Denial Letter)を受け取ることができ、携帯電話の契約や保険の契約などの手続きを行える。
成りすましも頻発 今年4月にも病歴や指紋データ含む420万人の情報流出
国民の膨大な個人情報が含まれているSSN。その安全管理体制は、万全なのだろうか。
残念ながら、米国では毎年SSNの悪用や個人情報の漏洩事件が起きており、特に成りすましによる被害は後をたたない。例えば、他人のSSNを利用し、その人に成りすまし、クレジットカードを契約して多額に利用したり、信用口座を開設してお金を借りたりという事件は頻発している。連邦取引委員会によると、成りすまし犯罪による被害総額は年間平均500億ドルという情報もある。
サイバー攻撃などによる、個人情報漏えいはさらに深刻だ。
2015年4月、米連邦政府人事管理局は、連邦政府職員と元職員の約420万人分の個人情報が流出したことを発表した。その後の発表では、4月の漏えい事件に関連して、2150万人分のSSNが影響を受けたという。今回流出した情報はSSNの基本情報である名前、誕生日、住所に加え、560万人分の指紋データ、さらに、その人の精神疾患などの病歴や金銭取引履歴などのバックグラウンド情報も含まれている。
これらの個人情報が流出すると、成りすまし事件だけではなく、学校の入学試験や就職活動の時に不利益が生じるなど、様々な問題を引き起こす可能性がある。
日本のマイナンバー制度は大丈夫?
日本でも2015年5月にサイバー攻撃を受け、日本年金機構の約125万件の個人情報が流出する事件が起きている。これから導入されるマイナンバーは、国だけではなく、一般企業も給与の支払いなどで使用するため、情報漏えいが起きるリスクは高い。
個人番号制度の先駆者である米国でさえも、情報管理が万全ではあるとは言えない中で、日本のマイナンバー制度はどこまで対策ができているのだろうか。情報管理、行政や企業の管理運営体制にはしっかりと目を光らせておく必要があるだろう。