もう惑わされない「ドルコスト平均法」のカラクリ

もう惑わされない「ドルコスト平均法」のカラクリ

「ドルコスト平均法」は、株式など価格が変化する同一商品について、定期的に一定金額ずつ継続して買い続ける投資方法である。投資方法が分かりやすい、長期投資する場合でも、毎回の支出額があらかじめ分かっているため安心して続けられる、定期的に投資することで貯蓄行動を実感できる等、行動ファイナンスの点で大きなメリットがある。また、一定期間、同一商品を同一数量買い続ける「等数投資法」と比べると、「買付平均単価」を下げる効果がある。しかし、収益性という点からすると、「ドルコスト平均法」は必ずしも有利な投資方法とはいえない。今回は、「ドルコスト平均法」と「等数投資法」を比較することで、そのカラクリを理解し、もう一度自分の投資方法を見直してみよう。

ドルコスト平均法と等数投資法の比較
 ドルコスト平均法は、1回の投資金額が決まっているので、商品価格が高い時は購入数が少なくなり、安い時は購入数が多くなる。時間価値を考慮し、投資案件を実行するか否かを判断する際に使用される「IRR(内部収益率)」という指標を使い、価格が(1) 上がる場合、(2) 下がる場合、(3)上下に変化する場合、ドルコスト平均法と等数投資法を比較する。(IRRは、値が高いほど収益性が高いと判断する。)

(1) 株価が上がる場合
株価:1月1,000円、2月1,250円、3月1,400円、4月1,500円、5月2,000円
<ドルコスト平均法>
毎月2万円分、4ヶ月買い続け5月に全売却
合計買付数量:63株(1月20株、2月16株、3月14株、4月13株)
平均買付単価:1,270円(80,000円÷63株)
IRR:19.45%
<等数投資法>
毎月20株分、4ヶ月買い続け5月に全売却
合計投資金額:103,000円(1月20,000円、2月25,000円、3月28,000円、4月30,000円) 
平均買付単価:1,288円(103,000円÷80株)
IRR:19.71%
 上記のように株価が上がる場合、ドルコスト平均法は、等数投資法に比べ買付平均単価を下げることができるが、収益性からすると、IRRの値が高い等数投資法の方が有利な投資ができている。株価が上がり続けている局面は、安い時に買っておき、後で株価が上がった際に売却すると利益がでる。ドルコスト平均法は、株価が上がると株式数を減らして買ってしまうので、より多くの株数を買っている等数投資法の方が収益的に有利になる場合があるのだ。

(2) 株価が下がる場合
株価:1月1,000円、2月900円、3月800円、4月600円、5月500円
<ドルコスト平均法>
毎月2万円分、4ヶ月買い続け5月に全売却
合計買付数量:100株(1月20株、2月22株、3月25株、4月33株)
平均買付単価:800円(80,000円÷100株)
IRR:-17.74%
<等数投資法>
毎月20株分、4ヶ月買い続け5月に全売却
合計投資金額:66,000円(1月20,000円、2月18,000円、3月16,000円、4月12,000円) 
平均買付単価:825円(66,000円÷80株)
IRR:-17.64%
 上記のように株価が下がる場合、ドルコスト平均法は、等数投資法に比べ買付平均単価を下げることができるが、収益性からすると、IRRの値が高い等数投資法の方が有利な投資ができている。株価が下がっている局面は、投資金額を少なくし買い控えた方が良いのだが、ドルコスト平均法は逆に単価が下がった分多くの株式数を買付けてしまうため、等数投資法よりも収益性が下がる結果となることがある。

(3) 株価が上下に変化する場合
ドルコスト平均法が等数投資法に比べ、収益性が高くなる例も検証しておこう。
株価:1月1,100円、2月800円、3月1,100円、4月1,000円、5月1,500円
<ドルコスト平均法>
毎月2万円分、4ヶ月買い続け5月に全売却
合計買付数量:81株(1月18株、2月25株、3月18株、4月20株)
平均買付単価:988円(80,000円÷81株)
IRR:17.63%
<等数投資法>
毎月20株分、4ヶ月買い続け5月に全売却
合計投資金額:80,000円(1月22,000円、2月16,000円、3月22,000円、4月20,000円) 
平均買付単価:1,000円(80,000円÷80株)
IRR:16.87%
 株価が上記のように変化する場合、ドルコスト平均法は、等数投資法に比べ買付平均単価を下げることができ、収益性からしても、IRRの値が高いドルコスト平均法の方が有利な投資ができているといえる。
 (3)のように、等数投資法に比べて、ドルコスト平均法が有利になる局面ももちろん存在する。しかし、株価が(1)上がる場合、(2)下がる場合の例からも分かるように、市場価格によって、両者の収益率は逆転してしまう。ドルコスト平均法は、収益性という点からすると、等数投資法と比べて必ずしも有利とは言えないのだ。

ドルコスト平均法のメリットは?
 一方で、ドルコスト平均法は、毎回の支出額があらかじめ分かっているため、家庭のキャッシュ・フローが見えやすく長期的にマネープランがたてやすい。また、定期的に投資することで自分の貯蓄行動を実感でき、行動ファイナンスの点で大きなメリットがある。すでにドルコスト平均法を使っている人も、これから使おうと考えている人も、これらメリットと実際の収益性に着目して、今後の投資方法を選んでみてはいかがだろうか。