「ドルコスト平均法」は有利な投資方法なのだろうか
「ドルコスト平均法」は、株式など価格が変化する同一商品について、定期的に一定金額ずつ継続して買い続ける投資方法である。投資の仕組みが分かりやすいため、初心者でも始めやすく、人気が高い。また、毎回の支出額があらかじめ分かっているため、安心して長期的に投資が続けられる等、行動ファイナンスの点でメリットがある。
しかし残念ながら、投資家が自分で投資時期を判断する場合と比較した際、リスク・リターンという点において、「ドルコスト平均法」は必ずしも有利であるとは言えない。今回は、「ドルコスト平均法は有利である」という考えにとらわれず、その投資方法の仕組みを見直ししてみよう。
「ドルコスト平均法」と「大口買付」のリスク・リターン
長期的に一定金額を投資する「ドルコスト平均法」は、価格が高い時に購入数量が少なくなり、価格が安い時に購入数量が多くなるため、買付平均単価を下げる効果が期待できる。では、定期的に一定金額の商品を買うのではなく、投資家が自分で買い時を判断し、まとまった金額を投資する方法(以下、本文中では「大口買付」と呼ぶ。)と比較した場合、「ドルコスト平均法」は有利な投資方法なのだろうか。株価が以下のとおり変化する場合、それぞれの利益を比較してみる。
株価:1月800円、2月1,000円、3月600円、4月1,250円、5月1,000円
<ドルコスト平均法>
毎月2万円分、4ヶ月買い続け、5月に全売却
合計買付数量:94株(1月25株、2月20株、3月33株、4月16株)
平均買付単価:851円(80,000円÷94株)
利益:14,006円 ((1,000円-851円)×94株)
<大口買付>
1月に94株まとめて買付、5月に全売却
合計買付数量:94株
平均買付単価:800円
利益:18,800円((1,000円-800円)×94株)
上記の例を見てみると、「大口買付」の方が「ドルコスト平均法」より、利益が大きいということが分かる。もちろん、1月の800円の時ではなく、2月の1,000円の時に94株の「大口買付」を行ってしまった場合は、利益が0円となり「ドルコスト平均法」よりも利益が小さくなる。つまり、「大口買付」を行っている場合は、自分で買い時を判断するので、株価が高い時に買ってしまうリスクがあるのだが、このリスクを負っている分、リターンが大きくなる可能性があるのだ。
株式単価によって自動的に買付数量が決まる「ドルコスト平均法」を選択している場合は、当然ながら、投資家が買付数量を決定できない。例えば上記の例で説明すると、3月に「株価が600円は安いから、いつもより多めに50株くらい買いたい。」と考えても、20,000円分の33株だけしか買付しない。逆に、4月に「株価が1,250円は少し高いな。今回は買わないでおこう。」と思っても、自動的に20,000円分は買付にいってしまう。「ドルコスト平均法」は、買付数量に関して自分の判断は必要なく、高値で買いすぎてしまうというリスクを負っていないが、その分リターンも少なくなるのだ。
買付手数料と機会費用で比べてみると?それでも気になる「ドルコスト平均法」
さらに「ドルコスト平均法」と「大口買付」の比較でポイントとなるのは、商品の買付手数料である。「ドルコスト平均法」は、同一銘柄を長期間にわたって少しずつ買い付けるため、「大口買付」に比べ買付手数料が高くなる場合が多い。また、まとまった金額がすでに手元にある投資家にとって、「ドルコスト平均法」で少額を長期にわたって投資するのは、手間、つまり「機会費用」がかかってしまうので、「大口買付」の方が効率的であるといえる。
一方で「ドルコスト平均法」は、行動ファイナンスの点で大きなメリットがある。例えば、「ドルコスト平均法」で投資する場合、毎回の支出額があらかじめ分かっているため、安心して長期的に投資ができる。また、ルールに従って投資をしているので、万が一損をした場合でも、自分で買付時期や売却時期を判断する場合に比べ、後悔の気持ちを感じずに投資活動を続けることができるのだ。
大手金融機関の営業員やファイナンシャルプランナーは、投資家に説明がしやすく、かつ自分たちは定期的に手数料収入が得られるため、「ドルコスト平均法」を勧めるケースが少なくない。「ドルコスト平均法」のリスク・リターン、そしてこれらの行動ファイナンスのメリットをよく考慮した上で、自分に最適な投資方法を選んでいただきたい。