優良企業を見極める!「ROE」の正しい使い方
株式投資に最も重要なこと。それは、どこの企業に投資をするか、ということである。数ある企業の中から優良企業を見極めるための指標として、ROE:Return On Equity(自己資本利益率)がよく使われるが、ただ単にROEの値が高い企業を選んではいけない。ROEの数値の大きさだけでなく、なぜその企業のROEが高くなっているのか、という根本的な原因を探ることが重要である。
ROEの仕組みをもう一度おさらいし、今後の株式投資の参考にしていただきたい。
ROEを計算する
ROE:Return On Equity(自己資本利益率)とは、企業の当期純利益を自己資本で割った値であり、企業が株主から集めた資本をどれだけ効率的に使い、利益をあげることができているのかを示している。一般的には、このROEの値が高いほど、投資効率がよい優良企業と判断される。また、ROEは、1株あたりの利益(EPS:Earnings Per Share)を1株あたりの純資産(BPS:Book value Per Share)で割ってもとめることができる。例えば、EPSが400、BPSが5,000の企業の場合、ROEは8%となる。Yahooファイナンスや、証券会社のホームページ等を見てみると、各企業のEPSやBPSが掲載されているため、自分でもROEを計算することができるだろう。日本経済新聞(2015年3月17日)によると、現在の日本の上場企業の7割はROEが1桁台であり、日本企業の平均ROEは8%程度となっている。
ROEが高い企業とは?
では、ROEの数値はどうしたら高くなるのだろうか。おもな理由は以下のとおりである。
1. 利益が増える
2. 株主へ配当することで、自己資本が減る
3. 新しいビジネスや技術開発等に投資し、自己資本が減る
4. 自社株買いをすることで、自己資本が減る
5. 経営が行き詰まり、自己資本が減る
ROEの値が伸びている企業が本当に優良な企業かどうか見極めるためには、これらの理由を探る必要がある。例えば、理由1「利益が増えた」ためにROEが高くなった企業は、投資効率があがった企業であり、成長しているといえるだろう。また、理由2「株主への配当」は、利益がでたら、その利益を投資家にきちんと還元するという点において、適切な経営を行っている企業といえる。
一方、理由3「新しいビジネスや技術開発」に自己資本を投下している企業の場合は、その新ビジネスや技術が今後発展していく分野であるかどうかによって、企業の成長は大きく変わってくる。有名な話だが、例えば「マイクロソフト」社は、1975年の創業から約30年間、投資家に対して配当をせず、自己資本を新ビジネスや技術開発に投資するという経営方針をとっていた。これは、配当として投資家にお金を返すよりも、そのお金でマイクロソフトが経営を行う方が利益を増やせたからであり、投資家もそれを期待してマイクロソフトの株を買っていたためだ。このように、新ビジネスや技術開発に自己資本を投下しているためにROEの値が高くなっている企業の場合は、その投資内容を見極めて優良企業かどうかを判断する必要があるだろう。
最後に、理由4「自社株買い」と理由5「経営の行き詰まり」についてだ。これらの理由によりROEが高くなっている企業は、決して優良企業であるとは判断できない。もちろん、短期的な利益を狙って株式投資をする場合は別だが、長期的な企業の成長を期待して投資する場合には、ROEの数値が高いからといって、単純にこのような企業に投資しないように注意することが必要である。
さらに注意すべき企業とは?
株主から集めたお金や企業があげた利益を内部留保として蓄え、株主への配当もせず、新ビジネスや技術への投資もせず、ただただ貯蓄しているような企業は、最もタチが悪い。もしあなたが、このような企業の株を持っている場合はすぐに売るか、「もの言う株主」として、株主総会でこのお金の使い道についてしっかり経営方針を問い詰めるべきであろう。ただROEの値だけに注目するのではなく、その数値の裏にある背景を理解し、企業が自己資本をどのように使っているかしっかりチェックすることは、優良企業を見極める有効な手段である。